カラーシャの谷・晶子便り

パキスタン北西辺境州の谷に住むカラーシャ族と暮らすわだ晶子の現地報告。

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『カラーシャグロム・コーン』へのハイキング記

前回に続いて静江さんの楽しい山歩きの記です。(わだ)

 今回の滞在中、眺望と残雪をもとめて、カラーシャグロム村のはるか上部にあるコーン(頂上という意味らしい)を往復しました。
 
 3月下旬にあんずの花が咲き始めたというのに、なんと4月5日午後から、綿のような湿った春の雪が夜半まで降り、村でも10cmほど積もりました。果物の実り(あんず、くるみ、桃など)に悪い影響がでないといいのですが・・・。村の雪はすぐに解けましたが、見上げると、谷底にある村をはさむようにそびえ立つ尾根の上部には、針葉樹の間にまだ雪が輝いて見えます。そこで、数年来のなじみのマイガイド、サラマッドさんを頼み、ハイキングに行くことにしました。
 4月11日、バラングルー村を7時40分に出発。ジープ道を下流に向かって少し歩き、左手のカラーシャグロム村への吊り橋を渡ります。桃の花と麦の若葉に彩られたのどかな春を満喫しながら、集落の間の小道をのんびりと登って行きます。
 するとサラマッドさんが、村人に何やら尋ね歩いているのです。実は、この先の山羊小屋に、噛みぐせのある白い犬がいるとのこと。カラーシャは、山羊を守るために(オオカミ、ユキヒョウなどの野生動物や山羊泥棒対策と聞きました)犬を必ず飼っているので、そういう意味では「理想的な犬」と言えますが、わたしたちにとっては大問題です。
 春祭りの後、5月下旬から6月上旬頃になると、犬は山羊の群れと一緒に高地へ移動するのですが、今はまだ村のすぐ上の山羊小屋にいます。わたしたちはこれから、その犬がいる山羊小屋の横を通るのです。昼間は、わずかな草をもとめて高い尾根を移動している山羊の群れと一緒にいて、山羊小屋にはいないはず。でも、その犬だけ山羊小屋に残っている可能性もある、というのです。山羊小屋の屋根の上に伏せていて、見慣れぬ怪しい人が通ると頭上から襲いかかってくるとか・・・。
 集落を後にして、ボンチ(ヒイラギの一種)の疎林を通り抜けると、やがて、問題の山羊小屋が見えてきました。20mほど手前でサラマッドさんは立ち止まり、動こうとしません。息を殺して様子を探りますが、何の気配も感じられません。長い思案の結果・・・、道からはなれて山羊小屋を遠く迂回することになりました。右側にある牛小屋の柵をはずして通り抜け、豆とトウモロコシの芽が小さく出ている広い畑を横切っていきます。2人とも両手に石を握り、山羊小屋から目をはなさず、抜き足差し足で・・・。もし犬がいて気が付かれたら、あっという間に畑を走り抜けて来るでしょうから・・・。幸い犬はいなかったようです。なんと気が小さくて臆病なガイドだ、と思うかもしれませんが、常にわたしの安全を第一に考えるサラマッドさんなのです。
 水流がほとんどないグロムガーの左岸ぞいを登ります。(「ガー」とは「支流」という意味でつけるそうです)乾燥してざらざらとしている上に、村人の生活圏を越えているので浮き石が多く、なんとも歩きにくいのですが、やがて水がちょろちょろと湧き出る泉に着きました。以前、秋にここを訪れた時には、犬の心配はなかった代わりに、伐採した丸太を尾根の上から落としている気配をサラッマドさんが察知し、はるか頭上を仰ぎ見ながら休憩をとったものでした。今日は、尾根の上部に山羊の群れがいるようなので、落石に注意です。
 ここでグロムガーから離れ、まず右の小尾根上をめざしての急登です。サラマッドさんが歩きやすいところを探しながら、ゆっくりゆっくりと先導します。振り返ると、ルンブール谷が眼下に見下ろせます。いつの間にか、ずいぶん高度を上げてきたものです。やがて小尾根に上がると、そこは展望台。滞在しているバラングルー村から上流へとたどり眺めていくと、夏の耕作地のある支流(サンドリガー、パラルガー、バウックガー)の入り口が分かります。山羊の夏の放牧地はまだ雪におおわれています。あの雪で輝いている山の先は、アフガン国境になります。左に視線を転じると、ムンムレット谷へ通じる峠も見えます。ここからの眺望に大満足です。
 いよいよコーンをめざし、小尾根をたどって登ります。ところが、少し歩いてまた立ち往生。山羊の群れが、尾根の右から左側へと横切ろうとしているのです。人の気配はない。「もしかして、山羊と犬だけ?」草を食みながらゆっくりと移動して行く山羊をやり過ごすために、また休憩をとらなければなりません。
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写真:山羊の群れ
 むかし(1980年代)の12月、隣のムンムレット谷の尾根を一人で散策中に、初めて山羊の群れの移動に遭遇した時のことを思い出しました。群れとともに歩いている犬に気安く声をかけ、恐ろしいうなり声をあげられたのでした。「もし、一定の距離以上に群れに近づいていたら、犬に外敵とみなされ、襲われて大変危険だった。無事で良かったですね。」と、後で教わって、ビックリ。知らないということは、なんとのんきなことでしょうか。
 この小尾根には、ラー(杉の一種)やクウェリック(松の一種)などの木々が、まだ多く残されています。針葉樹林の中は強い日差しがさえぎられて、北八ヶ岳か南アルプスかという気分で、楽しく歩けます。ただ違うのは、特に頂上近くは、いわゆる「山羊道」(山羊の群れが歩いてできた踏みあと)なのです。地図もなく、ルートを探し探し(探してもらいながら)登るのも楽しいものです。残雪も多くなり、湿って腐った春の雪に足をとられながら、やっとのことで12時半にコーン(頂上)に到着。約5時間かかったことになります。
 このコーンは、南北に長くのびる大きな尾根上に位置しています。この大きな尾根をはさんで、西がルンブール谷。東側はチトラル方面です。サラマッドさんの話では、むかし(ジープ道ができる前の1970年代頃まで?)村からチトラル方面へ、何か用事(生活必需品入手や労役、裁判など)で行く時は、この大きな尾根を越えるのが一般的だったそうです。
IMGP1889.jpg

写真:頂上に立つマイ・ガイド
 残念ながら曇り空になり、濡れた足先も冷たいので、午後1時、早々に下山開始。登ってきた同じ小尾根をもどります。帰りは道も分かっているので、はやい!午後3時半、バラングルー村に帰着。今回も、思いがけない経験ができ、また、数日間は筋肉痛で、ハイキングの余韻も楽しみました。

 カラーシャグロム・コーンのある大きな尾根を北へたどると、まずサンドリガー・コーン、次にパラルガー・コーンとなります。無雪期には、縦走気分が味わえるので、おすすめします。逆コースも可。(終わり)


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